10月のお知らせ(アトピー性皮膚炎)

 今月のトピックスは、アトピー性皮膚炎についての話にしたいと思います。

このアトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下した乾燥状態に、アレルゲン(ダニ・ほこり・食べ物など)の侵入やストレスなどの多様な環境要因が重なって起こるものと考えられています。幅広い年齢層に起こります。特に、0~5歳と21~25歳の患者数が多いとの報告があります。

 

 〈原因・特徴〉

 ・表皮・角質層の乾燥とバリア機能異常。皮膚がカサカサして乾燥している状態か

  ら、皮膚が硬くてゴワゴワになる、腫れてジュクジュク汁が出るといった症状まで様々な段階がありま

  す。

 ・強い炎症、強い痒みを伴う湿疹を繰り返す。

 ・喘息・アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜炎などの疾患を発症しやすいアトピー素因(家族歴、既往歴

  がある、または免疫にかかわるIgE抗体を産生しやすい)をもつ。

 ・左右対称にできることが多い。おでこ、目の周り、口の周り、耳の周り、首、わき、手足の関節の内側な

  どに出やすい。

 ・憎悪と寛解(症状が軽減、またはほぼ消失した安定状態)を繰り返す慢性の疾患(一般的に6か月以上、

  乳幼児では2か月以上続く状態)である。

 ・日本では乳幼児期に発生することが多く、自然寛解が期待できる軽症患者も多い。

  (小児期では脂漏性皮膚炎と区別がつきにくい場合や、食物アレルギーが関与する場合があります。)

 

 〈治療目標〉

  日常生活で支障をきたすことなく、皮膚炎の状態が軽微で薬物療法もあまり必要としない状態、または軽

 い症状は続くが、急激に悪化することはまれで、悪化しても持続しない状態を治療目標にします。

 (多くの方は、目標に達することが可能であり、一部では自然寛解するケースも珍しくないです。ただ、治

 療を開始して1か月たっても改善しない場合は、皮膚科等の専門医に診てもらうことをお勧めします。)

 

 〈薬物療法〉

  憎悪期に即効性のあるステロイド外用剤を使用して、その後に症状が落ち着いてからタクロリムス軟膏

 (プロトピック軟膏)へ移行します。タクロリムス軟膏の1日の使用回数や、1日おきなどの間隔をあける

 などの調節をしながら寛解維持期を保つようにします。

  基本的には、ステロイド外用剤やタクロリムス軟膏を使いますが、小児においては非ステロイド系消炎外

 用剤を用いる場合があります。ただ、抗炎症効果は極めて弱く、接触皮膚炎を生じることもまれではないの

 で注意が必要です。

  ステロイド外用剤は、症状に対しての効果の強さを選択することが可能であるが、局所または全身性の副

 作用(皮膚萎縮、潮紅、ざ瘡(ニキビ)、多毛、細菌・ウイルスの感染症など)が問題となります。一方、

 タクロリムス軟膏では副作用は限定されていますが、効果に限界があり、使用量にも制限があります。その

 ため、この2種類の薬をうまく組み合わせて使用することが重要です。

 

 〈日常生活での対策〉

  ・家の中のダニを駆除する。

 ・小児では原因の可能性のある食物を摂取しないように注意する。ただし、過剰な食物除去は、成長障害を

  起こす場合もあるためご注意ください。

 ・皮膚の清潔を保つ。石鹸を使用する場合、刺激の少ないものを選択すること。皮膚の乾燥につながるの

  で、入浴後は保湿(使用感の良いものを選択する)を十分に行うように注意する。

 

 

 アトピー性皮膚炎において大切なことは、早く対処してしっかりと炎症を抑えて悪化すること防ぐことです。さらに、うるおいを保つスキンケアを行い、皮膚への刺激を少なくすることです。早めに皮膚科等の専門医に受診して相談するようにしましょう。

 

 

矢橋店 和田